スケジューリングをわかりやすく簡単に!税効果会計を図解で解説!

税効果会計の繰延税金資産の回収可能性では、「スケジューリング」はちょっぴり難しいですが大きな検討ポイントです。そこで今回は、スケジューリングを図解でわかりやすく簡単に解説しました。

スケジューリングをわかりやすく簡単に!税効果会計を図解で解説!

スケジューリングとは

スケジューリングは、繰延税金資産や負債の発生原因の「一時差異」が、いつ解消するのかを特定する作業のことをいいます。

多くの場合、会計の費用・収益を認めるタイミングが法人税の損金・益金を認めるタイミングよりも先行します。

このズレを調整するのが税効果会計なので、法人税がいつ損金・益金を認めるのかを把握する作業が非常に重要です。

詳しくは後述しますが、繰延税金資産がいくら計上できるのかを、一時差異の解消が特定できるかできないかで、分けて規定しています。

繰延税金資産をいくら計上できるか(=回収可能性)の論点は、会社分類という考え方が採用されています。

会社がどの分類に該当するのかに応じて、計上できる金額が変わってきますし、対象になる将来減算一時差異も変わってきます。

具体的には、分類1であればスケジューリングの可能/不能は回収可能性に影響はありませんが、分類2以下では、スケジューリング不能となった瞬間に、繰延税金資産は計上できなくなります。

スケジューリングはなぜ必要か?

スケジューリングが必要な理由は、繰延税金資産の計上額(回収可能性)に影響があるからです。

分類2では、スケジューリングが可能な一時差異であれば回収可能性ありと判断されます。

一方で、分類3以下は、スケジューリング可能であることに加えて、所得を見積る期間にも制限が加わってきます。

スケジューリングが可能になるには?

スケジューリング可能/不能を検討するには、下記のとおり2種類ある一時差異別に仕組みを確認します。

その上で、それぞれいつ損金に認められるのかを調べます。

償却系のもの (パターン1)

例えば償却系資産のような固定資産で減損損失を計上した場合、時間はかかるものの最終的に会計と法人税の差が解消することは確定しています。

別に売る意思決定をしなくても、解消していくからです。

会社が意思決定したもの (パターン2)

一方の土地の減損損失のような場合、スケジューリングは不能です。

会社が売却の意思決定をしない限りは、損金になるタイミングが永遠にやってこないからです。

スケジューリング可能の具体例

スケジューリング可能と判断される一時差異には、いくつかのパターンがあります。

そこで以下では、パターン別に一時差異の内容を紹介します。

翌期必ず認められるもの(パターン1)

未払費用や未払事業税、その他ですと賞与引当金は、来期中に必ずお金が出ていきます。

つまり、来期中に損金になることが確定しているので、特に何らかの意思決定も必要なく、当然にスケジューリング可能の一時差異になります。

一括評価の貸倒引当金は洗い替え処理をして毎期計上するので、必ず来期中に損金になることが確定しています。

なのでこちらも未払費用と同じように、特に何の意思決定も必要なくスケジューリング可能一時差異になります。

長期的にスケジューリング可能なもの(パターン2)

固定資産の減損処理をすると減損損失が発生しますが、減価償却に伴って一時差異は(時間はかかりますが)徐々に解消していきます。

退職給付費用も、同様に長期間にわたって徐々に解消していきます。

こういった性質があるので、これらの一時差異はスケジューリング可能です。

なお会計のルールでは、長期的に解消する一時差異として回収可能性について特別の規定はあります。

資産除去債務(パターン3)

資産除去債務もスケジューリング可能な一時差異になります。

具体的にいつ除去すると意思決定したわけではないですが、債務を見積もるときに「おそらく〇〇くらいに除去するだろう」という判断をしています。

ですので、事実上スケジューリングが可能という判断になります。

繰越欠損金(パターン4)

繰越欠損金は、条件付きでスケジューリング可能な一時差異「など」になります。

使える限度額や繰越期限があるので、サクッとスケジューリング可能とはいきませんが、会社分類で認められる範囲ならスケジューリング可能になります。

意思決定が必要な一時差異(パターン5)

土地の減損損失は売らないと損失は確定しないので、損金にはなりません。

また、個別評価の貸倒引当金も、損金として認められるには高いハードルをクリアしないといけません。

なのでこれらの一時差異は、「売る意思決定をした」とか「貸し倒れが確定した」といった明らかな状況が発生したら、スケジューリング可能になります。

会社分類とスケジューリングの関係

ここでは、スケジューリングと会社分類の関係を解説します。

会社分類1・2・3

会社分類1の場合は、繰延税金資産の回収可能性を検討するときに、スケジューリングできることを求めていません。

なので、スケジューリングをしなくても、繰延税金資産を計上できます。

会社分類2

分類2以下の会社は、「スケジューリング可能であること」が検討の前提要件としても止められています。

なので、スケジューリングの検討が不可欠で、スケジューリング不能な一時差異については繰延税金資産の計上対象から除かれます。

会社分類3

分類3でもスケジューリング可能な一時差異が前提要件ですが、さらに所得を見積もれる期間が5年です。

なので、5年以内に解消する一時差異という要件も加わります。

ちなみに、見積可能期間なので5年以上になることもあります。

会社分類4

分類4も考え方は分類3と同じですが、所得の見積可能期間が1年なので、対象の一時差異にも1年以内に解消の要件が加わります。

なお、但書・例外規定があって実質分類2や3になることがあるので、その場合は分類2や分類3と同じように検討します。

長期的に解消する差異とスケジューリングの関係

スケジューリング1・2・3

分類1と2では、他の一時差異と違ってスケジューリング可能/不能関係なく、繰延税金資産の回収可能性ありという規定になっています。

そして、分類3からはスケジューリング可能が要件となっているので、回収可能性を検討する上でスケジューリング作業は必須になります。

スケジューリング4

スケジューリング4でもスケジューリング必須です。

その上に所得の見積もり年数(=1年)というフィルター内で解消する一時差異が、繰延税金資産の回収可能性の検討対象となります。

スケジューリングと所得の関係

繰延税金資産の回収可能性って要するに何をしているの?
はてなさん
はてなさん
内田正剛
内田正剛
年度別に一時差異と所得を比べています

要するに、こんなイメージ図の作業をしています。

こんな作業をしようと思ったらいつ所得がいくら発生するか把握が必要ですし、スケジューリングをして、いつ一時差異が解消するのかの把握も必要になります。

今回のブログ記事はここまでです。

最後におすすめの解説記事のリンクを貼りつつ、解説を終えようと思います。


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