「法人税の別表がどことつながっているのかわからない」そんな疑問の答えは、「つながりの理由を知る」ことにあります。逆につながりを丸暗記しても、理由がわからないと忘れてしまいます。そこで今回のブログ記事では、「法人税の別表のつながり」を、理由とともにわかりやすく解説します。
【必見】法人税の別表のつながりを理由付きでわかりやすく図解解説
記事の信頼性
当ブログを書いている内田正剛は、週刊経営財務でデータベースアクセス数1位を獲得しています。
また、運営YouTubeチャンネルも登録者3,100名を超えていて、わかりやすいとご好評頂いています。
ご興味のある方は、プロフィールやYouTubeを見てみて下さい😌
記事の目次
今回のブログ記事で解説するトピックはこちらです。
|
別表4と別表1のつながり
別表4の一番下の「所得」が別表1の一番上の所得がつながっています。
法人税は儲け(=所得)に課税する税金だからです。
別表4は所得を、別表1は所得に税率をかけて調整して税額を計算する申告書です。
ですから両者は「所得」を通じて、つながる関係にあります。
スクショを示すとこんな感じです。
別表4は利益に調整を加えて所得を計算するので、一番上の数字(=当期純利益)は会計の損益計算書とつながっています。
また、所得の計算は、利益に会計と法人税の認めるタイミングの違い(=留保)や考え方の違い(=社外流出)を調整して計算します。
ですから、別表4では、加算・減算・留保・社外流出という項目が出てきます。
そして、それらの調整計算が終わって計算された所得は、別表1とつながる関係にあります。
別表4と別表5(1)のつながり
別表4の留保欄と別表5(1)はつながっています。
利益剰余金は過去の利益の蓄積なので、利益と利益剰余金は連動する関係にあるからです。
別表4は法人税版の損益計算書で、別表5(1)は法人税版の純資産の明細表ですから、法人税版の利益剰余金(=利益積立金額)は別表5(1)に掲載されています。
だから、両者はつながる・連動する関係にあります。別表4は、会計の利益に考え方の違い(=社外流出)・タイミングの違い(=留保)を調整して所得を計算しますし、別表5(1)は会計の純資産に留保項目をプラスマイナスして作成します。
ですから、別表4と別表5(1)は「留保」という項目を通じてつながる関係にあります。
スクショを示すとこんな感じです。
別表5(1)は、期首残高-減少+増加で期末残高を計算するしくみになっていますが、法人税版の利益剰余金(=利益積立金額)は、会計の利益剰余金に「法人税と会計の認めるタイミングの差」をプラスマイナスして計算しています。
この「法人税と会計の認めるタイミングの差」のことを留保項目と呼んでいますが、留保項目の発生解消は、別表4の加算・減算欄で書かれています。
ですから、別表5(1)の増減欄と別表4の加算減算欄の「留保」はつながる関係にあります。
別表5(1)と別表5(2)のつながり
別表5(1)と別表5(2)の未納欄・納税充当金の期首期末欄はつながっています。
別表5(1)と別表5(2)には、ともに「未納税金」や「納税充当金」の期首・期末残高を書く欄があるからです。
なぜ、書く欄があるかは、それぞれの別表の役割を押さえると理解できます。
別表5(2)の役割
別表5(2)は法人税版の租税公課の増減明細表の役割を果たします。
それぞれの税金の期首の未納(税金)残高に増加減少項目をプラスマイナスして期末の未納残高を計算する仕組みになっています。
また、会計では未払法人税等(=納税充当金)を会計帳簿・決算書へ載せているので、納税充当金がどのように増減したのかも把握しておく必要があります。
そこで、別表5(2)の下半分で期首期末残高と共に納税充当金の増減明細表も作成します。
別表5(1)の役割
別表5(1)は法人税版の純資産の明細表の役割を果たします。
別表5(1)は2部構成になっていて、利益積立金額と資本金等を書く欄があります。
別表5(1)は会計の数値をベースに、会計と法人税の認めるタイミングの違いを調整する形で明細表作ります。
未納税金と納税充当金
未納の税金というと、会計の世界では未払法人税等がありますが、未払法人税等(納税充当金)について法人税では負債として認めません。
その代わりに法人税が計算した税額の未納残高を負債として認めるというスタンスをとっています。
ですから、別表5(1)には納税充当金と未納税金を書くことになります。
なお、納税充当金を負債として認めない(=会計の利益剰余金は少なすぎる)ので納税充当金はプラス表記(利益剰余金より多い)し、会計が負債として処理していない未納法人税と未納住民税は、追加で負債を認めることになる(=会計の利益剰余金は多すぎる)ので、未納法人税と未納住民税はマイナス表記(利益剰余金より少ない)になります。
このように、別表5(1)と別表5(2)の役割は違いますが、納税充当金と未納税金(法人税・住民税)を書く欄があるので、両者はつながる関係にあります。
別表5(1)と別表5(2)のスクショをお見せするとこんな感じです。
加算と減算
所得を計算する別表4には、「加算」「減算」という項目が出てきます。
加算は利益にプラスして所得を計算することで、減算は利益にマイナスして所得を計算することです。
加算と減算の意味を知っておくと法人税の各別表のつながりの理解が進みます。
法人税の儲け(=所得)の計算は、会計の利益にプラスマイナスの調整を加える形で計算するからです。
所得を一から計算するわけではなく、会計の収益・費用と考え方が違う場合や・認めるタイミングが違う場合にそれを打ち消す/認めるという処理をします。
プラスマイナスの内容は、シンプルにいうと加算・減算ともに2種類の 合計4種類です。
内容をそれぞれ見ていきましょう。ポイントは、「その調整をすることで利益が増えるか/減るか?」を考えることです。
(1)加算その1
費用100を当期は認めないのなら利益にプラスするケースです。これは、費用の一部減額と一緒なので加算します。
(2)加算その2
過去の収益50を当期に認めるのなら利益へプラスするケースです。これは、収益が増えるのと一緒なので、加算します。
(3)減算その1
過去の費用50を当期に認めるのなら利益からマイナスするケースです。これは、費用が増えるのと一緒なので減算します。
(4)減算その2
収益100を当期は認めないのなら利益からマイナスするケースです。これは、収益の一部減額と一緒なので減算します。
留保と社外流出
留保は会計と法人税の認めるタイミングの差で、社外流出は会計と法人税での考え方の差(=永遠に解消しない)です。
つまり、会計と法人税には、内容の異なる違いがあるので、別々に把握をしておく必要があります。
将来の所得の計算への影響が異なってくるからです。
法人税の別表は、会計の決算へ違いを調整して作りますが、調整内容には、タイミングが会計と違っているだけのものもあれば、そもそも考え方が違うから「認める/認めない」ものもあります。
留保項目の例としては、償却資産の減損損失です。減損後は法人税の減価償却費の方が会計のそれを上回るので、徐々に費用として認められていきます。
社外流出項目の例としては、交際費等の損金不算入項目があります。
当期に費用から除かれた後、将来的に費用として認められるタイミングは永遠にやってきません。
別表4のスクショはこちらです。
まとめ
別表の作り方や調整の仕方は、それぞれ意味があります。
ですから、意味をおさえながら「別表のつながり」を理解していくと、頭にサクッと入ってくるので試してみてください。
今回の記事はここまでです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
簿記講座やっています
内田正剛が提供するサービス