子会社の留保利益の税効果の考え方と仕訳をわかりやすく簡単に解説

「子会社の留保利益の税効果の意味を知りたい!」難しい会計ルールの代表格である税効果会計の中でも、「留保利益の税効果」はひときわ難解なイメージの強いトピックです。とはいえ、「会計と法人税の一時的な差」という一時差異のポイントを押さえれば難しくありません。そこで今回は、子会社の留保利益の税効果の考え方と仕訳をわかりやすく簡単に解説します。

子会社の留保利益の税効果の考え方と仕訳をわかりやすく簡単に解説

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当記事を読むメリット

子会社の留保利益の税効果の考え方と仕訳が理解できるようになります。

記事の目次

今回のブログ記事で解説する主なトピックを紹介します。

考え方を簡単にいうと

会計と法人税の(一時的な)差が、追加で発生するという点に注目します。

個別F/Sでは、子会社株式は簿価(=取得価額)で計上されていますが、連結F/Sでは利益剰余金(※)も加えて取り込まれます。

※後ほど詳しく解説します

つまり、個別F/Sと連結F/Sでは、子会社株式に関して取り込まれる金額に差異が発生します。

そのため、子会社の利益剰余金を連結F/Sへ取り込むことで、会計と法人税の一時的な差が追加で発生します。

つまり、税効果の出番です。

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留保利益に税効果が発生する理由

一時差異

利益剰余金に関して発生した差異はいつ解消するのかを考えると、理解できます。

2つのタイミングで解消します。

1つ目が配当です。

配当すると、子会社側で利益剰余金が減少するので一時差異が少なくなります。

2つ目が売却等です。

子会社株式を売却すると、そもそもの一時差異の発生原因がなくなります。

税効果はいくら?

ヒントは、一時差異の解消理由です。

子会社から配当を受けると、配当側で源泉徴収されたり、親会社側で課税されることがあります。

そのうち、連結グループの税負担となる金額を税効果とします。

詳しくは、こちらで解説します。

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取得時剰余金と取得後剰余金

すでに事業を行っている会社に利益剰余金がある場合のトピックです。

買収する前に利益剰余金があり、買収後にも利益を稼いで利益剰余金がさらに増えた場合、一時差異になる利益剰余金はいくらになるのでしょうか。

答えは、買収後に増えた利益剰余金のみを対象にします。

のれんを考慮外にすると、会社の純資産=子会社株式の取得価額になります。

ですから、買収前に稼いでいた利益剰余金は、個別F/Sと連結F/Sでの差(=一時差異)になりません。

だから、買収後に増えた利益剰余金のみを対象にするわけです。

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外国での儲けに関する税金の超入門

次の章で、外国での儲けに課税する税金の知識を使うので、ここで超入門知識をお伝えします。

そのままだと二重課税が発生する【ステップ1】

日本では、全世界で稼いだ儲けに課税するというスタンスをとっています。

一方で、進出先の外国はその国で発生した儲けに課税します。

そうすると、進出先も日本も同じ儲けに対して課税することになり、二重課税という問題が発生します。

二重課税を防ぐ仕組み【ステップ2】

そこで日本の税制度では、二重課税を防ぐ仕組みとして、以下の2つの制度を設けています。

外国税額控除方式【制度その1】

日本の法人税を計算する上で、外国の税額をマイナスしましょうという制度です。

計算方法が難しいので、詳しい計算や調整内容は他の記事に譲ることにします。

損金算入方式【制度その2】

親会社の儲け(=所得)を計算する時に、外国税額を損金として処理する方法です。

留保利益に係る税効果との関係【ステップ3】

二重課税の話が留保利益の税効果で出てくる理由

ロジックはこんな感じです。

配当時に源泉徴収されても損金にならない

(配当したら)税負担が追加で発生する

であれば留保利益の税効果の会計処理が必要

このロジックを理解するうえで、「そもそも外国税額控除とか損金算入方式は何の話をしているのか?」を知る必要があるので、本章で触れたわけです。

税効果会計の会計ルールではどうなっている?

主に損金算入方式に触れています。

そこで当ブログ記事でも、損金算入方式を前提に解説します。

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留保利益に係る税効果の金額

留保利益の税効果(=追加税負担)は、2つの要素から構成されます。

1つ目が配当に伴うもので、2つ目がそれ以外(=主に売却)です。

それぞれ見ていきましょう。

配当編【その1】

配当などで留保利益が減るときに、追加で発生する税額が税効果の金額です。

では、いくらなのでしょうか?

追加税負担の金額を知るために押さえておきたい、2つの基礎知識を紹介します。

1.親会社側で受け取る配当金について

子会社がどこにあるか(外国・日本国内)で分かれるので、それぞれについて解説します。

なお、解説で出てくるパーセントは株式保有割合のことで、法定実効税率は30%とします。

(1)外国子会社(=外国法人)

25%以上であれば、外国子会社配当益金不算入の制度があります。

配当金を95%益金から除ける制度です。

逆にいうと、5%部分は益金になり税額が発生するので、留保利益の税効果の計算でも漏れないようにしたいところです。

したがって、配当が可能な(取得後)剰余金をベースに考えると、5%×30%(法定実効税率)をかけて計算した金額が、留保利益の税効果の金額になります。

(2)国内子会社(=内国法人)

以下の4パターンあります。

パターン 主な要件 益金にならない割合
完全子法人 100% 100%
関連法人 1/3超
その他 5%超〜1/3以下 50%
非支配目的 5%以下 20%

※負債利子をマイナスした後の全額

簡単にいうと、「その他」に該当したら配当の50%が益金にならないということです(控除負債利子の話は省略)。

例えば、配当金を1,000受け取ったら500が益金になって、それに課税されます。

つまり、税額150(=500×30%)です。

したがって、配当が可能な(取得後)剰余金をベースに考えると、1,000×50%×30%(法定実効税率)をかけて計算した金額が、留保利益の税効果の金額になります。

2.配当するときに天引きされた源泉所得税について

外国子会社からの配当の場合、外国で源泉税を天引きされたことになります。

つまり、外国での儲けに関する税金の話が出てきます。

その上で、外国源泉所得税のうち、損金にならないことで追加で税金が発生する金額があれば、それも留保利益の税効果の金額に含まれます。

売却編【その2】

売却益に親会社側で発生が見込まれる税額を計上します。

のれんの償却がない前提での売却益のイメージ図はこちらの通りです。

売却益に法定実効税率30%をかけた金額が、留保利益にかかる(売却編の)税効果の金額となります。

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留保利益に係る税効果の仕訳

繰延税金負債を使います。

配当などが行われた時に、会計の利益ベースで計算した税金費用よりも追加で税負担が発生するためです。

次に相手勘定ですが、発生原因が評価差額金のような「その他の包括利益累計額」ではないので、法人税等調整額を使います。

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留保利益に係る税効果を計上しない要件

必ず計上しなければならないわけではなく、計上不要な要件もあります。

背景を簡単にいうと、剰余金があっても追加税負担が発生しない見通しであることです。

配当編

【要件1】方針がある

親会社が、子会社は配当しない方針を採用している場合です。

配当しないのであれば、たとえ取得後剰余金があったとしても、追加税負担は発生しないためです。

【要件2】合意がある

株主の間で、配当しない合意がある場合です。

売却編

下記をともに満たした場合です。

・親会社が子会社株式を売却するか否かを決めることができる

・予測ができる将来期間で売却する意思がない

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簡単な計算例

こちらの記事で解説しています。

今回のブログ記事はここまでです。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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