「決算書がいっぱいあってどれも似た名前だけど、作るのが漏れてないかな?」そんな疑問をお持ちの経理担当者の方は少なくないのではないでしょうか。そこで社会福祉法人会計をわかりやすく簡単に解説するシリーズの今回は、社会福祉法人の決算書の全体像を、拠点やサービス区分との関係も交えつつお伝えします。
社会福祉法人の決算書の全体像をわかりやすく解説【拠点やサービス区分との関係も】
記事の信頼性
このブログ記事を書いた内田正剛は、社会福祉法人会計の指導監査のサポート業務に携わった経験が豊富にあります。また、週刊経営財務でデータベースアクセス数1位を獲得しています。ブログとともに発信しているYouTubeチャンネルも好評で、登録者6,100名を超えています。ご興味頂けましたら、プロフィールやYouTubeをご覧下さい😌
当記事を読むメリット
社会福祉法人の決算書の全体像が理解できるようになります。
記事の目次
今回のブログ記事で解説する主なトピックを紹介します。
会計処理をする単位が4つある【基礎知識】
かんたんな具体例を使うとイメージできると思います。
前提
社会福祉法人Aが、以下のような構成だったとしましょう。
・社会福祉事業と公益事業を行う
・社会福祉事業に3つの拠点(O・P・Q)と法人本部がある
・それぞれの拠点で2つのサービス(O1・O2・P1・P2・Q1・Q2)を行なっている
・法人本部を1つの拠点として扱う
以上を前提に、どんな決算をするかを見ていきます。
法人全体の決算【1番目の単位】
社会福祉法人Aという単位の決算です。
Aには2つの事業があり、3つの拠点や法人本部がありますが、それらを全てひっくるめた、「1つの法人」という単位の決算書を作ります。
事業単位の決算【2番目の単位】
社会福祉事業と公益事業のそれぞれについて決算を行います。
つまり、社会福祉法人Aの決算書の1つ下の段階に「社会福祉事業の決算」と「公益法人の決算」があるというわけです。
拠点単位の決算【3番目の単位】
1つの事業の中に複数の拠点がある場合に行う決算です。
今回の例では社会福祉事業に3つの拠点(O・P・Q)があるので、社会福祉事業の1つ下の段階にO拠点・P拠点・Q拠点、そして法人本部の4つの決算があります。
サービス単位の決算【4番目の単位】
1つの拠点の中に複数のサービスがある場合に行います。
今回の例では、3つの拠点の中に2つずつサービスがあるので、こんな感じの決算をそれぞれの拠点で行います。
O拠点・・・O1サービス・O2サービス
P拠点・・・P1サービス・P2サービス
Q拠点・・・Q1サービス・Q2サービス
内訳表とは
1つ下の段階に複数の単位の決算の単位がある場合に、その内訳を示す役割を果たすのが内訳表です。
先ほどの例を使うと、以下のようになります。
法人全体の内訳【1番目の単位の内訳】
「社会福祉法人Aは社会福祉事業と公益事業から構成されています」ということを示す決算書です。
例えば、ある収入が社会福祉事業80で公益事業20であれば、社会福祉法人Aの決算書には100と載っています。
この100を、「社会福祉事業80+公益事業20」という形で示す役割を果たします。
事業の内訳【2番目の単位の内訳】
1つの事業がどのような拠点から構成されているかを示すものです。
先ほどの例を使うと、ある収入がO拠点40・P拠点25・Q拠点10・法人本部5発生していたなら、以下の内容を示す役割を果たします。
社会福祉事業80 = O拠点40 + P拠点25 + Q拠点10 + 法人本部5
拠点の内訳【3番目の単位の内訳】
1つの拠点がどのようなサービスから構成されているかを示すものです。
先ほどの例を使うと、ある収入がO拠点で40発生していて、以下のように内訳を示すものです。
O拠点40 = O1サービス30 + O2サービス10
なお、今回の説明ではO拠点のみ取り上げましたが、P拠点・Q拠点も同じです。
決算書の全体像【まとめ】
ここまでの解説を踏まえて、決算書の全体像のまとめを示しておきます。
決算書は複数の種類がある【基礎知識】
以下の3種類の書類を作ります(詳しくは別のブログ記事で解説します)。
・資金収支計算書
・事業活動計算書
・貸借対照表
なお、以下の説明では、これらをまとめて単に「決算書」と呼ぶことにします。
それぞれの内容については、こちらのブログ記事で解説しています。
資金については、こちらのブログ記事で解説しています。
法人全体の決算書【1番目の単位】
社会福祉法人Aという1つの法人の決算書を作ります。
仮に複数の事業を行っている場合は内訳表も作ります。
例えば資金収支計算書であれば、法人全体の資金収支計算書とともに事業単位の内訳がわかる資金収支内訳表も作ります。
事業の決算書【2番目の単位】
社会福祉事業や公益事業などの内訳を示します。
例えば、事業活動計算書であれば〇〇事業区分事業活動内訳表で、それぞれの事業についての拠点の内訳がわかります。
逆に、事業単位での決算書は作りません。
したがって、事業単位の金額がわかる決算書は、【1番目の単位】で作る内訳表のみです。
拠点の決算書【3番目の単位】
拠点の単位で決算書を作ります。
仮に複数のサービスがあるのなら、内訳表も作ります(=明細書とよびます)。
例えば、資金収支計算書であれば、〇〇拠点区分資金収支計算書に加えて〇〇拠点区分資金収支明細書を作ります。
したがって、拠点の決算数値がわかる資料は以下の3つがあります。
・2番目の単位で作る(事業の)内訳表
・3番目の単位で作る(拠点の)決算書
・3番目の単位で作る(拠点の)明細書←内訳表と同じ趣旨
今回のブログ記事はここまでです。
最後におすすめの記事のリンクを貼りつつ解説を終えようと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。