分割型の新設分割の会計ルールでは、株主の会計処理がたくさん定められています。そこで今回のブログ記事では、図解を使いながら、分割型の新設分割の株主の会計処理【個別財務諸表編】のポイントをわかりやすく簡単に解説します。なお、解説をシンプルにするために、「対価は株式のみ」を前提とします。
分割型の新設分割の株主の会計処理【個別財務諸表編】を図解でわかりやすく簡単に解説
記事の信頼性
このブログを書いている内田正剛は、週刊経営財務でデータベースアクセス数1位を獲得しています。また、ブログとあわせて発信しているYouTubeチャンネルも好評で、登録者5,100名を超えています。ご興味頂けましたら、プロフィールやYouTubeをご覧下さい😌
当記事を読むメリット
分割型の新設分割の株主の会計処理の考え方が理解できるようになります。
記事の目次
今回のブログ記事で解説する主なトピックを紹介します。
解説の前提
会計ルールでは、対価が株式のみの場合と、それ以外も含む場合を分けて定めています。
当ブログ記事では、解説をシンプル化するために、対価が株式のみの場合を前提とします。
また、この記事の解説で出てくる「帳簿価額(簿価)」は、会計ルールの言うところの「適正な帳簿価額」です。
新設分割の当事者
いくつかの当事者が会社分割に関わります。
そこで、シンプルな解説にするために、正式名称とは違った以下のような呼び方をすることにします。
|
分割型分割の前後で何が変わるか?
新設分割をするまでは、分割A社がB事業部を持っていました。
ところが分割型の場合は、新設分割をすると、対価の株式は株主Cの株主へ交付されます。
つまり、分社型の場合は、分割の対価を分割A社が受け取るので、実質的には分割A社がB事業部を持ち続けているのと同じでした。
一方の分割型の場合は、分割の対価を株主Cが受け取るので、(旧B事業部に対する)投資関係に変化が生じ得ます。
新設分割会社の株主の会計処理の考え方
新設分割で新しくできる会社(=「新設分割設立会社」といいます)が、株主にとってどのような位置付けの会社になるかで異なります。
具体的には、分割A社が株主Cにとって以下の3つのパターンが想定されるので、順番に見ていきましょう。
|
なお、「その他の会社」は、子会社でもなく関連会社でもないという意味で捉えてください。
大前提
分割型の新設分割の株主の会計処理では、分割A社株式と新設B社株式の交換と捉えます。
したがって、新設B社株式の取得原価について(分割A社株式の)簿価を引き継ぐなら移転損益は認識しませんし、時価を使うなら移転損益が発生します。
【のちほどここへ図解を追加予定です】
分割A社が株主Cの子会社だった【パターン1】
3種類に分かれます。
新設B社は株主Cの子会社になる【種類1】
旧B事業部の株主資本相当額が、新設B社株式の取得原価となります。
株主Cは分割A社へ投資していたので、分割A社の一部であった旧B事業部にも投資していました。
その後、分割した後に旧B事業部は新設B社となりますが、株主Cは新設B社株式を受け取ります。
つまり、「旧B事業部へ投資している」という状態は、分割の前後で変わっておらず、投資は継続しています。
であれば、交換損益は発生せず、分割A社のときの簿価をそのまま引き継ぎます。
【のちほどここへ図解を追加予定です】
新設B社は株主Cの関連会社になる【種類2】
子会社のときと同じく、旧B事業部の株主資本相当額が、新設B社株式の取得原価となります。
これは、分割の前後で旧B事業部に対する投資が継続しているためです。
新設B社(=旧B事業部)は株主Cの子会社ではありませんが、分割の前後で関連会社であり続けています。
ある程度の影響力を旧B事業部へ発揮し続けており、投資は継続しています。
「支配が継続」ではなく、「投資が継続」が会計ルールのポイントです。
【のちほどここへ図解を追加予定です】
新設B社は株主Cのその他の会社になる【種類3】
以下の時価のうち、より信頼性の高い時価が新設B社株式の取得原価となります。
・旧B事業部の時価
・新設B社の株式の時価
分割型の新設分割では分割A社株式と新設B社株式の交換と捉える上に、新設B社株式を時価評価するので、移転損益を認識することになります。
新設B社は、分割A社の一部でしたが、分割の前後で株主の投資関係に変化が生じたためです。
つまり、旧B事業部への投資は継続していないと捉えます。
【のちほどここへ図解を追加予定です】
分割A社が株主Cの関連会社だった【パターン2】
2種類に分かれます。
分割したことで持分比率が上昇することはなく、関連会社→子会社のパターンは考える必要がないためです。
新設B社は株主Cの関連会社になる【種類1】
旧B事業部に係るA社株式の適正な簿価が、新設B社株式の取得原価となります。
旧B事業部に対する投資が分割後も継続しているので、移転損益を認識する必要がないためです。
【のちほどここへ図解を追加予定です】
新設B社は株主Cのその他の会社になる【種類2】
以下の時価のうち、より信頼性の高い時価を使って新設B社株式の取得原価とします。
・旧B事業部の時価
・新設B社の株式の時価
つまり、子会社(パターン1)の種類3と同じ考え方で、旧B事業部への投資は継続していないと捉えます。
したがって、移転損益を認識することになります。
【のちほどここへ図解を追加予定です】
分割A社が株主Cのその他の会社だった場合【パターン3】
生じうるケースは、「その他の会社→その他の会社」の1種類のみとなります。
分割型の新設分割では、株主Cの持分比率が増加することはないためです。
新設B社は株主Cのその他の会社になる【種類1】
旧B事業部に係るA社株式の適正な簿価が、新設B社株式の取得原価とします。
新設分割の前後で投資の性格に変化がないので、移転損益を認識するのは実態に合っていないためです。
【のちほどここへ図解を追加予定です】
会計ルールの定め方
会社分割の会計ルールは、(事業分離)会計基準と(企業結合&事業分離)適用指針で定められています。
そして、分割型の会社分割の株主Cの会計処理は、(独自のルールは設けずに)企業結合の「被結合企業の株主」の会計ルールを参照する形で定めています。
理由は、2つのステップを読み進めていくと理解できます。
分割型会社分割の実態【ステップ1】
株主Cが持っていた分割A社株式(の一部)と新設B社の株式は、形式的には交換しません。
とはいえ、旧B事業部と同じ価値の新設B社の株式は、一旦分割A社に交付された後に、分割A社から株主Cへ交付されます。
つまり、会社分割によって分割A社株式は(旧B事業部の分だけ)価値は下がりますが、同じ価値の分割B社株式を受け取ります。
そこで、実質的には交換したのと同じと考えて、分割A社株式(の一部)と新設B社の株式を引き換えた前提で会計処理をします。
【のちほどここへ図解を追加予定です】
分離元企業と被結合企業の株主の経済的実態は同じ【ステップ2】
以下の図表をご覧ください。
【のちほどここへ図解を追加予定です】
左の図が企業結合のイメージ図で、右の図が会社分割のイメージ図です。
イメージ図の「出て行った事業と同じ価値の株式を受け取る」という部分に注目してください。
企業結合の株主A(=被結合企業の株主)と会社分割のP社(=分離元企業)は、経済的実態が同じです。
であれば、わざわざ会社分割用の規定は設けずに、企業結合の規定を参照すればいいという考え方です。
企業結合
株主Aが支配するQ社の事業全部をP社へ移転させる代わりに、(同じ価値の)P社株式を受け取っています。
会社分割
分離元企業(P社)は構成するR事業をQ社へ移転させる代わりに、(同じ価値の)Q社株式を受け取っています。
今回のブログ記事はここまでです。
後ほどYouTube動画とPodcastを公開予定です。
また、新設分割に関する会計ルールの全体像や仕訳は、後ほど別の記事で紹介する予定ですので、お楽しみに。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。