「フラット連結で連結財務諸表はどうやって作るのだろう?」 連結担当を任されたけど、孫会社がいるグループだと簿記の教科書そのままとはいかず、悩ましいですよね。フラット連結がガッツリ解説されている本もあまり見かけません。そこで今回は、フラット連結のパターンの連結財務諸表の作り方のうち「未実現利益の消去」をわかりやすく簡単に図解で解説します。
【図解】フラット連結の財務諸表の作り方をわかりやすく簡単に解説
記事の信頼性
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当記事を読むメリット
フラット連結に関する未実現利益の消去が理解できるようになります。
記事の目次
今回のブログ記事で解説する主なトピックを紹介します。
なお、サブ連結の未実現利益の消去の解説と同様に、以下の前提を置いて解説します。
- アップストリーム
- 孫→子のケース
サブ連結での未実現利益の消去の考え方は、こちらのブログ記事で書いています。
仕訳を理解するコツ
ポイントは2つ
1つは、仕訳を3つの要素に分解するということで、2つ目は、混乱した時の対応策を知っておくです。
このうちの2つ目については、混乱したらで解説しています。
それでは、「仕訳を3つの要素に分解する」について意味をお伝えします。
仕訳の3つの要素
未実現利益の消去は、3つの要素がくっついて1つの結論に辿り着きます。
・売上原価&棚卸資産
・税効果
・非支配株主への按分
早く結論へ辿り着きたいと3つをまとめて考えると、混乱してしまうので避けておいた方がいいです。
この順番で、1つずつ考えるのが近道です。
フラット連結での未実現利益の消去の検討ポイント
未実現利益はどこで発生しているか?
発生場所が子会社・孫会社のいずれかによって(特に非支配株主持分・損益の)金額が異なるので、未実現利益がどこで発生しているかの把握は欠かせません。
連結財務諸表への影響は?
以下の項目への影響を検討する必要があります。
・売上原価
・棚卸資産
・税効果
・非支配株主持分と損益(※)
※正確には「非支配株主に帰属する当期純利益」ですが、解説をシンプルにするために「非支配株主損益」と表現します。
非支配株主はいるか?
子会社と孫会社に非支配株主がいると、非支配株主への按分という仕訳が加わります。
特に、孫会社に非支配株主がいる場合は、実質比率を使います。
税効果は発生しているか?
税効果は発生します。
法人税の所得計算では、未実現利益の消去の処理を行わないためです。
むしろフラット連結では、税効果の計算根拠である一時差異はいくらなのかの把握が重要な検討ポイントです。
フラット連結の復習
仕訳の具体的な理解へ入る前に、フラット連結のおさらいをしておきましょう。
グループ図
このようなグループを前提に解説します。
サブ連結との関係させつつ理解を深めていくためです。
逆に、ときおり実務で出てくる親会社と子会社が協力して孫会社を支配するケースは、当ブログでは取り扱わないこととします。
サブ連結が使えないためです。
フラット連結とは?
親会社の連結F/Sを作るにあたり、子会社の連結F/Sを作ることなく親会社へ連結させる方法のことをいいます。
これに対して、子会社グループの連結F/Sを作った上で、それを親会社に連結させる方式をサブ連結といいます。
サブ連結での連結F/Sの作り方は、こちらのブログ記事で解説しています。
実質比率
親会社が孫会社を実質的にどの程度持っているかを示す比率です。
例えば以下の前提であれば、実質比率は56%になります。
・親→子:70%
・子→孫:80%
フラット連結では、親会社が孫会社を直接連結するので、実質比率を使うことがあります。
例えば非支配株主への按分では、100%から56%を差し引いた44%を使います。
未実現利益はどこで発生?
未実現利益がどこでいくら発生しているのかの把握が欠かせません。
中でも、子会社なのか孫会社なのかの把握は重要です(特に非支配株主がいる場合)。
非支配株主への按分金額に影響があるためですが、そもそも論である「フラット連結の目的」を知ると、さらに腹落ちします。
フラット連結の目的
親会社と非支配株主の連結グループにおける持分の実態を連結F/Sに反映することです。
だから、未実現利益の消去をするにあたり、親会社の影響の程度を示す実質比率を使って按分仕訳を検討する必要があるわけです。
子会社で発生【パターン1】
未実現利益が発生している棚卸資産の金額、親会社の持分比率、そして利益率を把握します。
孫会社で発生【パターン2】
未実現利益が発生している棚卸資産の金額、利益率に加えて、実質比率の把握が必要です。
以上の情報を把握すると、未実現利益の消去の仕訳の準備が整います。
未実現利益の消去が連結財務諸表へ与える影響
孫会社で発生している未実現利益の消去をするにあたって、連結グループへ与える影響は以下のとおりです。
売上原価の調整
(孫会社へ販売した)連結会社が計上した売上原価は、未実現利益の消去に伴い金額が変わります。
棚卸資産の減少
孫会社にある棚卸資産のうち、未実現利益の金額だけ過大になっているので、消去します。
連結グループ間取引で発生した未実現利益だからです。
税効果会計
詳しくは後ほどの章で解説しますが、未実現利益消去の連結仕訳をすることで、会計と法人税の一時的な差が追加で発生します。
非支配株主がいる場合、どの金額が一時差異になるか混乱してしまいますが、その時は「会計と法人税の一時的な差」という基本に立ち戻ると、腹落ちします。
非支配株主持分・損益について
100%グループでない場合は、非支配株主への按分仕訳が出てきます。
税効果を考慮外とすると、未実現利益消去の場合の非支配株主の仕訳を考えるのはシンプルですが(=比率をかければいいだけ)、税効果を視界に入れると複雑になります。
理解のヒントは、P/Lの表示を思い出すことです。
非支配株主の有無でどう変わる?
未実現利益の消去がどのように変わるのかを見ていきます。
解説にあたっては、以下の前提を置くことにします。
・未実現利益は孫会社で発生(未実現利益は200)
・親→子:70%
・子→孫:80%
・税効果は考慮外
孫会社まで完全支配関係がある場合【仮定】
連結F/Sの観点からは、売上原価と棚卸資産がともに200過大になっています。
したがって、売上原価と棚卸資産を200消去する連結仕訳をします。
前提通りの支配関係がある場合【実際】
未実現利益の消去の金額そのものは変わりません。
影響があるのは非支配株主への按分に関する仕訳です。
実質比率を計算し、その上で非支配株主への按分仕訳を行います。
実質比率は56%(= 70% × 80%)です。
したがって、【仮定】で紹介した仕訳に加えて非支配株主へ48%(= 100% – 56%)割り振る連結仕訳も別途行います。
税効果の考え方
連結の税効果はどう考える?
連結仕訳の税効果は混乱してしまいがちですが、理解のポイントはこんな感じです。
(正確性をやや犠牲にすると)個別会計と法人税をイコールと仮定
↓
その上で、個別会計と連結会計の差をイメージ
↓
未実現利益消去に伴って差が一時的に発生
繰延税金資産か繰延税金負債か?
繰延税金資産です。
理解のポイントは、「未実現利益」という用語です。
法人税では未実現利益の消去の仕訳をしないので、法人税的には未実現利益にも課税されます。
そして(連結)会計では、グループ外部へ販売したときに利益が実現しますが、法人税は既に課税済です。
つまり、未実現利益が発生した時点で税金が前払いされているようなイメージです。
だから、繰延税金資産になるというわけです。
フラット連結の場合
原則ルールの単体課税を前提にすると、連結仕訳をすることで、会計と法人税の一時的な差が追加で発生します。
これは、フラット連結をした場合も同じです。
なお、非支配株主の会計処理をどう捉えるのかは注意が必要です。
考え方のポイントは、P/Lで非支配株主損益が税金費用の上/下のどちらで表示されているかです。
もちろん税金費用の下で表示されています。
したがって、非支配株主へ按分する前の、未実現利益の消去額に対して法定実効税率をかけて税効果の金額を計算します。
今回のブログ記事はここまでです。
ブログの内容を解説したYouTube動画はこちらです。
Podcastでもお楽しみ頂けます。
フラット連結の未実現利益の消去の仕訳は、こちらの記事で解説しています。
最後までお読み頂きありがとうございました。