税効果会計で最もよく目にする「繰延税金資産」は「税金の前払い」と説明されますが、「繰延税金資産とは税金の前払い?」って感じでイメージがつかみにくいですよね。今回は繰延税金資産を簡単に解説しましたので、これで税効果会計が簡単に理解できるようになりますよ。
繰延税金資産とは何かをわかりやすく解説!
【税効果会計をわかりやすく簡単に3🤔】
✅税効果会計の目的は?
→税法の世界で計算した「税金」を会計の「税金費用」に近づける
→ズレの大半は「費用の否認」✅税金費用?
→会計の考え方:儲けは「収益-費用」で計算すべき
→費用を否認されて増えた税金を「税金の前払い」と考える pic.twitter.com/l1MEEjXTnQ— 内田正剛@会計をわかりやすく簡単に (@uchida016_ac) 2019年5月16日
会計の税金費用は「(収益-費用)×税率」
利益と所得は違う
会計は儲け(=利益)を「収益-費用」で計算します。
そのため、会計的には税金(=税金費用)は、「利益×税率」で計算すべきと考えています。
ところが税金の金額は、税法のルールにしたがって計算するので、「利益×税率」とはなりません。
利益に調整を加えた所得に税率をかけた金額が、税額になるからです。
法人税的には費用が増えると具合が悪い
近年の会計制度は「見積り費用」がどんどん増加傾向にありますが、税法的には認めがたい処理です。
見積り費用がどんどん増えては儲けが少なくなって、税金も少なくなるからです。
そのような背景から、会計的に計算した「税金費用」と税法で計算した「税金」にどんどん差額が広がっていったのです。
そこで税効果会計
一方で会計的には、税金費用=利益×税率で計算したいです。
そんな狙いで税効果会計が導入されました。
解消しないズレはどうしようもないですが、タイミングの違いで解消するズレは「会計の方で調整しちゃおう」って考え方です。
損益計算書の下の方を見ると「法人税等」と「法人税等調整額」が出てくると思います。
このうち「法人税等調整額」が「税効果そのもの」で、「法人税等」と「法人税等調整額」の合計が、会計の「税金費用」になります。
このズレのことを税効果会計では、「一時差異」と呼んでいます。
でも税金は税法で計算するから税金が多くなっちゃう
税効果会計が税金費用を調整計算するといっても、税金は税法が計算します。
特に最近のルールでは、会計で計算した費用を「それは将来の費用です」というスタンスで税法は一旦否認します。
そうすると、税金を計算する時には会計の費用よりも「税法の費用」が少なくなるので、税金の金額は、会計が想定した金額よりも大きくなります。
多くなった分は?
【税効果会計をわかりやすく簡単に4🤔】
✅繰延税金資産とは何?
→税金の前払✅前払?
→会計では「費用」なのに税法では「将来の費用だから」一旦否認
→税額が多くなっちゃう
→会計的に「あるべき税金」より「一旦」税金をたくさん支払う
→税法が費用を認めた時に解消(=取り崩し)✌️ pic.twitter.com/iZTrZxrhei— 内田正剛@会計をわかりやすく簡単に (@uchida016_ac) 2019年5月16日
将来的に税法が費用として認めてくれた時に、逆に会計の利益をベースに計算した税金費用よりも実際の税金納付額が少なくなります。
これを税効果会計では、「税金を前払いした」と考えます。
会計の費用を否認したタイミングで「税金を前払い」して、税法が費用として認めたタイミングで「前払いが解消した」と考えるのです。
解消した時に、繰延税金資産を取り崩します。
繰延税金資産の回収可能性は?
「税金の前払い」は、「将来に税金を払う」ことを前提とした話です。
将来100円しか税金を払わないのに、「税金200円を前払いしました」とはならないのです。
この、「前払いと認める範囲」について税効果会計では、「回収可能性」「会社分類」という考え方を採用しています。
繰延税金資産の回収可能性の話は奥が深くて論点がたくさんあるので、このブログ記事で解説しています。
繰延税金資産の取り崩しとは?
繰延税金資産は計上したら終わりではありません。
将来のことを根拠に資産として計上しているので、将来の見通しが不透明になってきたら、取り崩す話が出てきます。
つまり、将来の業績見込みが悪化すると出てくる検討ポイントです。
詳しくは以下の記事で解説しています。
税効果会計のおすすめの本やnoteの紹介記事
「税効果会計をわかりやすく解説したおすすめの本・noteを知りたい!」
そんな方におすすめする本やnoteは、以下のブログ記事で紹介しています。
繰延税金資産の表示の改正は?
平成31年3月期から表示場所が改正されているので、改正内容を考え方とともにまとめました。